「不動産業界に興味はあるがどんな仕事をしているかわからない…」という就活生に向けて、今回は不動産業界の仕事内容や年収、さらに選考を受ける際のポイントを解説します。
「総合ディベロッパー」を初め、就活生に人気な企業ランキングで上位に位置する不動産業界。この記事を読んで、どんな会社があるか参考にしてみてください。
不動産業界の現状
まずは不動産の説明と不動産業界の年収について解説します。不動産業界は、土地や建物を扱う業界で、年収は「総合ディベロッパー」と呼ばれる業界では新卒でも30万円を超えます。
そもそも不動産とは?
不動産業界とは、土地や建物に関わる業界のことです。建物と聞くと、建設を最初に思い浮かべるかもしれませんが、不動産の業務は多岐にわたります。
マンションや住宅の開発から、買い手と売り手をつなげる仲介業務、さらに不動産の管理など、様々な業務に関わることができます。
詳しい仕事内容については「不動産業界の仕事」で解説します。
不動産業界の年収
不動産業界の年収に関して、国税庁が出している「民間給与実態調査」によると、平均給与は「457万円」となっています。全体平均が「458万円」なので、およそ平均と同じ値です。
一方、就活で人気の総合ディベロッパー大手5社を見ると、新卒給与がどこも30万円を超えており、大卒(院卒)の平均給与を大きく上回っています。
加えて、住宅補助や通勤手当等もあり、給与・福利厚生の面は非常に優れています。
総合ディベロッパーの各募集要項を基に作成。
(※1)三井不動産のデータは、総合職の給与。業務職の場合、給与は大卒で250,000円。
また、住宅販売メーカーでも、営業職で成績を上げている人は基本給に加えて、インセンティブがあり、大きく稼げる可能性があります。
このように不動産業界は、入社する会社の規模や業務内容で年収が大きく変動します。選考を受ける際は、給与や福利厚生を公式ホームページで予め調べておきましょう。
不動産業界の仕事
ここでは、不動産業界の仕事を詳しく解説していきます。 不動産業界の仕事は主に開発はディベロッパー、流通は不動産仲介や販売代理、さらに管理業務等があります。
具体的な会社名をあげると、開発としては「三井不動産」や「三菱地所」、販売仲介では「住友不動産販売」や「東急リバブル」、さらに販売会社では「積水ハウス」や「住友林業」などがあります。
開発
開発では、土地の仕入れからマンションや商業施設などの設計を一貫して行う業務です。建物の企画を考え、内容をもとに土地使用の交渉に移り、交渉が成立したら建設業者やデザイナーへの発注を行います。
開発は「ディベロッパー」と呼ばれる会社が行っており、主に以下のような会社があります。
- 三井不動産
- 三菱地所
- 東急不動産
- 住友不動産
- 野村不動産
- 森ビル
- 阪急不動産
- 東京建物
不動産仲介
不動産仲介は、不動産を所有しているオーナーと利用者をマッチングさせる事業です。買い手と売り手をつなげて、仲介する際の手数料が収益源となっています。扱う不動産はマンションやアパート、顧客一戸建て住宅、さらに土地など様々な種類があります。
加えて、不動産仲介ではオーナーの情報をもとに土地を買いたいディベロッパーに情報提供する役割も担っています。例えば、三井不動産は三井不動産リアルティという完全子会社を所持しており、仲介を行うリアルティと連携して開発業務を行っています。
不動産仲介では主に以下のような会社があります。
- 三井不動産リアルティ
- 住友不動産販売
- 東急リバブル
- 野村不動産ソリューションズ
- 三井住友トラスト不動産
- 三菱UFJ不動産販売
- みずほ不動産販売
販売代理
販売代理業務はその名の通り、オーナーからの委託を受けて、顧客に広告活動や販売といった営業活動を行う業務です。販売代理業務は、売り主からの手数料が収益源になります。
扱う不動産は、企業ごとに異なり、主に「戸建て住宅」と「マンション」に分かれます。
(戸建て住宅)
- 大和ハウス工業
- 積水ハウス
- 飯田グループホールディングス
- 住友林業
- オープンハウスグループ
- 旭化成ホームズ
- 一条工務店
- ミサワホーム
- パナソニックホームズ
(マンション)
- 住友不動産
- 大京
- 東急不動産
- 東京建物
- 野村不動産
- 三井不動産レジデンシャル
- 三菱地所レジデンス
- プレサンスコーポレーション
- エスリード
- 穴吹不動産
- フージャースホールディングス
- 日鉄興和不動産
戸建て住宅やマンション販売では、様々な会社があります。また、住友不動産や野村不動産のように開発に加えて、グループで販売まで行う会社もあります。
管理
不動産の管理業務は、ビルや住宅などを効率よく活用するためのサポートを行います。例えば、商業施設の場合は設備の管理や企業に入ってもらうためのテナント誘致、マンションでは賃料の回収やトラブル対応など、不動産の持ち主に代わって様々な業務を行います。
代表的な企業としては、「三井不動産レジデンシャルサービス」や「東急コミュニティー」などがあり、大手ディベロッパーが管理業務を併行しているケースが多いです。
不動産業界の展望と課題
不動産業界では、少子高齢化により新設の住宅着工戸数が減少している半面、海外展開をして収益を上げている会社も少なくありません。
さらに、最近ではITによる効率化や都心部での不動産価格の高騰など、まだまだ不動産業界では収益が期待できます。
着工数の減少
国内では、少子高齢化の影響で、住宅の購入者が減り国内市場規模が縮小傾向にあります。国土交通省が出している「建築着工統計調査」によると、令和5年の新設住宅着工戸数は819,623戸となり、3年ぶりに減少しました。
総計 | 持ち家 | 貸家 | 分譲住宅 | |
令和元年 | -3.95% | 1.94% | -13.65% | 4.87% |
令和2年 | -9.92% | -9.58% | -10.38% | -10.25% |
令和3年 | 5.05% | 9.38% | 4.77% | 1.53% |
令和4年 | 0.36% | -11.31% | 7.38% | 4.73% |
令和5年 | -4.64% | -11.42% | -0.34% | -3.60% |
国土交通省「建築着工統計調査報告(令和5年計)」を基に作成。
コロナ禍の令和2年(2020年)は、815,340戸まで減少し、その後2年間は上昇傾向が続きましたが、昨年は再び減少となりました。
前年比からの上昇・減少率を示した表を見てみると、持ち家は昨年から11.42%、分譲住宅(マンションと一戸建)は3.6%減少となっており、全体的に減少となりました。
業界の売上
先ほど、「新設住宅着工推移」は減少していると話しましたが、一方で不動産業界の売り上げ規模は回復傾向にあります。財務省が出している「法人企業統計調査」によると、2024年1~3月期の売上高は、14兆1,325億となり、.前年の2023年1~3月期よりも24.4%増加しています。
財務省「法人企業統計調査」を基に作成。
背景として、円安による利益の増加や海外展開でのマーケット確保があります。
例えば、住宅メーカーの積水ハウスではアメリカの戸建住宅事業の売上が増加したり、総合ディベロッパーの三菱地所ではアメリカや欧州といった先進国での賃貸住宅への投資で利益をあげたりするなど、不動産業界各社で海外展開を進めています。
不動産価格の上昇
都心部では海外投資家の関心も高まり、不動産価格が上昇しています。不動産研究所のデータによると、2023年は東京23区のマンション価格が高騰しており、平均値として11483万円、中央値として8,200万円と前年比から大きく上昇しています。
不動産研究所「首都圏マンション 戸当たり価格と専有面積の平均値と中央値の推移」を基に作成。
背景としては、低金利や円安による海外の富裕層のニーズ増加などが挙げられます。
IT化による効率化
近年、ITによる急速な進歩により、不動産業界も業務の効率化が進みました。例えば、「IT重説」と呼ばれるこれまで対面で行っていた重要情報の説明をオンラインツールを活用して顧客が自宅から説明を受けられるようになりました。
また、「スマートコントラクト」のシステムを活用してこれまでアナログで行っていた「売買契約書」や「登記申込書」についてもブロックチェーン技術で契約の自動化と文書の改ざん防止を同時に取り組めるようになりました。
このようにIT化の波を受けて、不動産業界もさらなる収益の上昇が期待されています。
不動産業界の選考ポイント
最後に不動産業界に向いている人の特徴や志望動機について書き方を解説します。
不動産業界の志望動機では、不動産業界を志望している理由と不動産の中でその会社を選んだ理由の2つを自分の言葉で書くと、説得力のある文章に仕上がります。
不動産業界に向いている人
不動産業界に向いている人の特徴として主に3点あります。
- 目標に対して意欲的である
- 忍耐力がある
- 情報のキャッチが早い
1つ目の「目標に対して意欲的である」という点は、営業活動を行う上で重要なポイントとなります。不動産業界では個人の売り上げ目標が設定されている会社が多く、その月の目標を達成するために日々戦略を考えたり、スケジュール調整をしたりします。目標に対してできることを惜しまず、取り組んでいく姿勢が不動産業界では求められます。
2つ目の「忍耐力がある」という点については、業務に取り組んでいく中で求められる能力です。不動産では、プロジェクトの商談やセールスの交渉など、社内・社外の人と業務を進めていく中で、ストレスを感じることもあります。そのような時に、忍耐力がある人は粘り強く仕事に取り組むことができ、不動産業界での適性もあります。
最後の3つ目は「情報のキャッチが早い」ことです。不動産市場は変化が激しく、1つ1つの扱う不動産に特徴があり、情報収集能力がある人が向いています。扱う物件の内容を把握するのはもちろん、不動産に関する最新の法改正やマーケットの動向など、業務に関する内容に興味を持ち続けられるかが肝心です。
以上の3点に当てはまる人は、不動産業界への適性が高いといえます。
不動産業界の志望動機の書き方
不動産業界の志望動機の書き方として、ポイントは2点あります。
- なぜ不動産業界を志望しているのか?
- その中でも、なぜその会社なのか?
不動産業界を選んだ理由については、自分が将来成し遂げたいことを言語化して書くとオススメです。
例えば、ディベロッパーであれば土地の開発を行うので、「人々に幸せの空間を提供したい」や「心の豊かさを実感できる空間を実現したい」といった書き方があります。また、戸建住宅の販売では、「お客様の一生涯の買い物の手助けをしたい」といった理由で書くことができます。
続いて、「その中でも、なぜその会社なのか?」という点については、独自性を持たせた内容を記述する必要があります。
独自性を持たせる書き方としては以下のようなポイントがあります。
- 理念やポリシー
- 取り組んでいるプロジェクト
- 説明会・インターンシップで感じた雰囲気
各会社の理念やポリシーで共感した点を書いたり、実際に会社が取り組んでいるプロジェクトについて記述したりすると独自性を持った志望動機になります。
不動産業界では、会社が公式ホームページに「決算説明資料」を出していることが多いです。この「決算説明資料」を使えば、その会社が重視していることや取り組んでいるプロジェクトについて体系的に知ることができます。そこから、具体的な情報をもとにして、その会社の志望動機を書くと企業の特徴を押さえた志望動機になります。
また、実際に説明会やインターンシップに参加して、感じたことを書くのも独自性を持たせた内容になります。実際に説明会に参加することで、企業の解像度が高まると、ESがより書きやすくなるのでオススメです。
まとめ
今回は、不動産業界の仕事内容や企業情報についてまとめました。不動産業界は開発や仲介・販売、さらに土地や建物の管理など、取り組める仕事が多岐にわたり、入社するためには「なぜその会社なのか?」という点を志望動機に書くのが大切です。
総合ディベロッパーや不動産仲介、販売代理など、不動産業界といっても様々な会社があるので、まずはこの記事で興味をもった会社を調べたり、説明会やインターンシップに応募したりして業務の解像度を高めていきましょう。
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