大学院進学と就職で迷ったときは?メリット・デメリットを解説

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理系は大学院進学率が高いため、就職時に学部卒業で働くか、大学院に進んでから就職するかは、多くの人が慎重に考えるべき問題です。

大学院進学は、専門知識を更に深めたり、研究に没頭したりするための選択肢であり、将来的には学問のエキスパートや、高度な技術を持つプロフェッショナルを目指す人々にとっては欠かせないステップとも言えます。

一方で、学部を卒業したあと即座に社会に飛び込み、働きながら経験を積み、キャリアを築いていく道も、自らの人生設計において非常に有意義な選択肢と言えます。

しかし、どちらの道を選ぶかは単純な選択ではありません。それぞれのメリット・デメリットを深く理解し、自分自身の価値観や目標、そして将来のビジョンに照らし合わせて判断する必要があります。

この記事では、大学院進学と就職という二つの道の具体的なメリット・デメリットを詳しく解説します。

理系の大学進学率は高い?

まずは、全体の大学院への進学率を見てみましょう。令和元年の「学校基本調査」によると、平成31年3月に大学を卒業した者は485,613人でした。そのうち大学院に進学した人は58,782人であり、進学率は約12%でした。(※平成27年度に大学へ入学し、4年で卒業した学生数を対象としています)

したがって、大学から大学院へ進学する割合はおよそ8人に1人となります。 逆に言えば、8人中7人は就職など進学以外の進路を選択していることがわかります。

全学部を通してみると、大学院への進学は多数派ではないと言えます。

参考:令和元年度学校基本調査

続いて、理系の大学院の進学率を見てみましょう。

理学系では、約40%の大学生が大学院へ進学しています。具体的には、理学・工学・農学の学部から大学院へ進学した人は合計で42,841人です。

この年に上記の学部を卒業した学生の総数は107,803人であり、進学者の割合はおよそ40%となります。 特に工学分野では進学を選ぶ人が多く、上記の進学者数のうち31,711人が工学系の学部出身者です。

全学部での進学率が8人に1人であることを考慮すると、理系学部では5人中2人が進学しています。

このように、「理系学部は大学院への進学率が高い」というイメージは実際の統計に基づいており、一般的な傾向と言えます。

参考:e-Stat 政府統計の総合窓口

大学院に進学する場合のメリット

大学卒業後、大学院進学を選択することには以下の3つの主な利点があります。

  • 専門的な知識と研究経験が手に入る
  • 専門職への就職が有利になる
  • 学部卒よりも給料が高い傾向がある

それぞれ詳しく解説していきます。

専門的な知識と研究経験が手に入る

大学院では、学部のカリキュラムよりもさらに専門的で深い知識を獲得することができます。また、研究に取り組むことで、自分の関心のある特定の分野について徹底的に学ぶ機会が得られます。

そして、教授や研究チームとの密な連携や指導のもとで、高度な研究スキルを身につけることができます。また、論文執筆や学会発表といった学術的な活動を通じて、研究者としての経験を積むこともできます。

専門職への就職が有利になる

大学院で獲得した専門的な知識や研究経験は、専門職への就職において有利な要素となります。特に研究職や技術職を目指す場合は、大学院での経験が求められるケースが多くあります。

また、企業や研究機関において、高度な専門知識や研究スキルを持つ人材は需要が高く、競争力のあるポジションを得る機会が増えます。

学部卒よりも給料が高い傾向がある

一般的に、大学院修了者の初任給は学部卒業生よりも高い傾向があります。特に、研究職や技術職を目指す場合、大学院で獲得した専門的な知識や研究経験が評価され、給与面でのメリットが得られることがあります。

また、企業が専門性を重視する場合、大学院修了者の給与待遇はより優遇されることがあります。

大学院に進学する場合のデメリット

大学院に進学することには多くのメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。

  • 社会に出る時間が遅くなる
  • 学費が多くかかる
  • 研究生活と就活の負担

以下に、大学院進学のデメリットを詳しく説明します。

社会に出る時間が遅くなる

大学院に進学すると、社会に出るタイミングが2年遅くなります。

そのため、社会人としての経験を積むことが遅れることになります。この遅れは、社会人経験において学部卒業生との差を生む可能性があります。

学費が多くかかる

大学院では、学費がかかる場合があります。特に理系の大学院では、文系に比べて学費が高い傾向があります。

研究に専念するためには経済的なサポートが必要であり、奨学金や助成金などの制度を活用することも検討する必要があります。学費の負担は進学の際に考慮すべき要素です。

研究生活と就活の負担

大学院では、特に修士課程1年次に研究と授業を並行して進めることが求められます。

また、同時に就職活動も行わなければならないため、時間やエネルギーの使い方に工夫が必要です。

その中で研究の成果を上げる一方で、内定を獲得するための努力も必要です。この両立はストレスや負担を引き起こす場合があります。

学部卒で就職する場合のメリット

続いて、学部卒で就職するメリットについて解説していきます。

  • 社会経験を早く積める
  • 早めに収入が得られる
  • 研究生活と就活の負担

社会経験を早く積める

学部卒で就職することにより、大学院修了者と比べて2年以上早く実務経験を積むことができます。早く現場で働き始めることで、業務や職場の実態を体験し、実践的なスキルや知識を身につける機会が得られます。

また、学部の新卒採用では、企業が個々の学生の成長性を重視して採用活動を行うことがあります。自社での教育や研修プログラムを通じて社員を育成することを目指している企業では、新卒者の意欲や成長ポテンシャルを評価する傾向があります。

学費の負担がない

大学院に進学せずに就職する場合、大学院での学費の負担がなくなるため、経済的な負担が軽減される利点があります。

また、学部卒の場合、学費の支払いや奨学金の返済といった経済的な負担がなくなることから、迅速な経済的自立が可能になるでしょう。

特に、経済的な独立や家族の経済的な支援が必要な場合には、学部卒での就職は重要な選択肢となります。

早めに収入が得られる

学部卒で就職することで早く収入を得ることができます。大学院に進学する場合は2年間の学生生活を送るために経済的な負担が生じますが、学部卒で働き始めれば早く収入を得ることができます。

そのため、自由にお金を使うことや将来の資金計画を早めに立てることができます。

大学院に進学する場合は、学費や生活費のためにアルバイトや奨学金を受けることが一般的ですが、就職後はそういった制約がなくなります。

そのため、自分自身の経済的な状況を早めに改善することや、将来の資金計画を立てることが容易になります。

学部卒で就職する場合のデメリット

最後に、学部卒で就職する場合のデメリットについて説明します。

  • 学校推薦の難易度の高さ
  • 専門性の高い求人への応募制限
  • 専門的な成長の機会の制限

学校推薦の難易度の高さ

大学が企業に対して優秀な学生を推薦する場合、大学院生の方が専門的な知識や研究経験を積んでいるため、学校推薦を獲得しやすい傾向があります。

一方で、学部卒の場合は学校推薦の獲得が難しくなる可能性があります。学校推薦を活用して将来のキャリアを展望している場合は、大学院進学の方が有利になることがあります。

専門性の高い求人への応募制限

特定の分野の知識や研究経験が求められる仕事では、大学院修了を応募要件としていることがあります。

そのため、学部卒では専門性の高い求人に応募することが制限される場合があります。

研究職や高度な技術を要求される職種に就きたい場合は、大学院進学が有利になる可能性があります。

専門的な成長の機会の制限

大学院ではより専門的な知識や研究経験を積むことができますが、学部卒で就職する場合はその機会が制限されます。

大学院では教授や研究チームとの密な連携や指導を通じて高度な研究スキルを身につけることができますが、学部卒では実務経験を重視する職場での成長が主となります。

まとめ

院進と学部卒での就職に迷った場合は、両方の準備を進めておくことも考慮すべきです。

ただし、注意点もあります。 就職活動は、広報活動が卒業年度の前年度の3月1日以降に行われ、面接などの採用選考は卒業年度の6月1日以降になることが一般的です。

一方、大学院入試の時期は大学によって異なりますが、内部推薦がある場合は学部4年の6月頃、秋入試は9月頃、春入試は2月頃に行われることが一般的です。

大学院入試の時期がやや遅いため、就職活動と並行して準備を進めることは可能です。ただし、就職活動を最後まで行ってから急遽大学院進学を決める場合、試験対策や研究活動の準備に時間を割くことができず、大学院での研究活動にも影響を及ぼす可能性があります。

最終的な選択をする前に、自分の興味や将来のキャリアについてよく考え、それに合った選択をすることが重要です。準備を進めながらも、自分の意思決定を見極めるための十分な時間を確保することが大切です。

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